SOLD OUT
著者:トシオ・モリ
訳者:大橋吉之輔
出版社:毎日新聞社
発行年:1978年12月10日初版
サイズ:196x137x17
種類:ハードカバー
状態:少しみ 少やけ 帯少やけ
1949年発表。日系アメリカ文学の先駆者である作家トシオ・モリによる短篇集。
トシオ・モリは1910年3月3日カリフォルニア州オークランドで生まれた日系2世。本書は彼が16歳のときオークランドの古書店で見つけ感銘を受けた作家シャーウッド・アンダーソンによる、オハイオ州のワインズバーグという架空の町を舞台にした22篇の短篇「ワインズバーグ・オハイオ」にあやかって、カリフォルニア州のヨコハマ町という架空の町を舞台にした22篇の短篇で構成されている。
序文を寄せている作家ウイリアム・サローヤン(本書表記はウィリヤム・サロイアン)は、トシオ・モリの文体について「彼の作品には文法的な誤りが充満しており、その英語は、特に彼が何かすばらしいことを必死に訴えようとするときに、はなはだ良くない。」と述べています。家庭では日本語で話をしていたという日系2世のモリは、英語の習得に苦労したのでしょう。サローヤンはモリを「生まれながらの作家」と呼び、言葉を超えた何かを表現していることを賛辞しているのですが、たしかにヨコハマ町の住民たちの生活を淡々と描いたこの物語の空気感は、「すばらしい独特の香り」に溢れていてたいへん面白いです。翻訳者の大橋吉之輔はこの空気感を出すのにたいへん苦心したようで、うまくまとまった素晴らしい名訳だと思います。他の訳者の翻訳も読んでみたいです。
ちなみに、本作から名前をとった「YOKOHAMA CALIFORNIA」という日系アメリカ人フォーク・バンドがいて、1977年に同名のアルバムを出しています。2016年にCDで再発されているのですがなかなか良いアルバムで今も愛聴しています。トシオ・モリと共に過去の産物にしておくのはもったいないと思います。
装幀:倉橋三郎